エピローグ
キーラが。
願い事を叶えてくれる、だって──!?
「いぃいっいいよ!」
咄嗟に手を振りながら断るルーティを目に先程までとは打って変わった脳天直下の手刀が下される。
「あだっ!」
「せっかくのチャンスだってのに何断ってやがる」
「だ、だって僕は別に願い事とかそんな」
言いかけたところで。
両手を掴まれたかと思うと白魚のような手でそっと包み込むように握られて。
「……ルーティ」
キーラは一点の曇りもない天色の目で見つめる。
「お前は私達に生を与えてくれた」
「お、大袈裟だよ!」
「そう畏まらずに受け取っておくれ」
「だってあの時父さんに会わせてくれたし!」
頑なに譲らない姿勢で。
「僕はそれだけで充分だから!」
思ってたより必死に声を上げていたお陰で息まで上がってしまったが対するキーラは笑みを湛えたまま黙り込んでいる。……金銀財宝だの地位だの名誉だの人の欲望は留まることを知らないだろうが自分は今すぐそれが欲しいかと言われれば首を横に振って否定できる。断言できる。特別求めているつもりもないが立場上いずれも時間と努力でどうにか出来るものなのだから神様の力に頼る必要はない。
世界平和とか悪の滅亡とか他にもメジャーな選択肢は神様の力に頼ってまで叶えたい願いかと聞かれると首を傾げる。世界の為、人々の為に戦う戦士なら願うべきなのかもしれないがそれこそこれまで戦場で散っていった戦士達の軌跡を無下にするようで。
「、……」
僕は考えすぎなのかもしれない。それでも流石に納得してくれた気がして手を引こうとした。……が、改めてぎゅっと握られて。
「……願いを」
通じてない。
「き、君のお兄さんって頑固だったりする?」
「お兄様は慈悲深いだけだよ?」
通じてない(二回目)。
「ウルフに」
「私はお前に説いている」
「……だそうだ」
こればかりはウルフも予想していたのだろう、変に声を荒げたりまではしなかった。それどころかポケットから取り出した煙草に火を点けようとまでしている。神様の前で。あまりに無作法、いや無慈悲。
「さっさと済ませろ」