エピローグ
僕は。自分の考えや言動の全てが正しいものだとは思っていない。
多数派の意見を汲み取るならあの時堕ちていくふたりをそのまま見送るべきだったと思うし、もっと言ってしまえばマスターとクレイジーも洗脳に侵された時点で──いや。それより前に司令官に捕えられて見せしめに手を下されようとしていた時点で深く取り入らず目を背けるべきだったのだろう。
でも。
僕には出来るはずもなくて。
愚かなのは知ってる。何度も口を酸っぱくして言い付けられてきた。どれだけ願っても皆が皆幸せになるのは難しいことでそれで例え幸せになっても今度納得してもらえるとは限らない。
彼の話した通り何をどうしたって結局のところ淀みは生まれて人はその都度様々な想いを述べながら人を傷付け自身も傷付くのだ。埒が明かないと心折られて手足を止める人が水底に沈んでいく中で、僕は愚かにも氷塊の天辺で踏み堪えている。
皆が皆、なんて。
途方のない願いだとしても。
「っ……うん」
それでもこうして──誰かが救われるなら。
「君たちが」
ルーティは涙を呑んで笑いかける。
「生きることを……選んでくれてよかった……」
愚かだと貶されて笑われたっていい。
僕は。僕に救われたって人が笑ってくれるだけで。
それだけで充分、救われるから──
「!」
隣に立っていたウルフが頭の上に手を置いた。
取り分けて言葉はなく。
それでも何より──嬉しかった。
「へへ」
ダーズはいつもの調子で笑って手を離す。
「驚かせてごめんね?」
「ううん」
「トモダチが教えてくれたんだよ」
友達というのは。……訊ねるまでもなくその背後で蠢く影を見つけて苦笑い。探知能力まであるんだ。
「お礼を言いにきたの?」
「それもあるよ?」
そういえばキーラは創造神と破壊神、基マスターとクレイジーについて軽く触れていたけど。大方、下されるべき制裁を見送った慈悲に対する賛辞を突っ撥ねられたんだろうな。容易に想像が出来る……
「、……それも?」
遅れて目を丸くするルーティに。
「うんっ」
ダーズは無邪気な笑顔で。
「お兄様がお願い事をひとつ叶えてくれるって!」
「へぇー。……えっ、……え?」