エピローグ
そこに居たのは。
天使のように柔らかい笑みを浮かべた少年で。
「っ……」
不思議と込み上げる。
この少年はただ純粋無垢に兄の愛を求めていただけだったのだ。その為ならどれだけ罵られても虐げられても耐えられた。人の手で地に突き落とされても尚兄の愛だけを健気に求めた。それがどんな形でも構わないからと混沌と闇に蝕まれながら焦がれた。
こんな風に優しく笑うのに。
この手の芯には確かな温もりがあるのに。
「やっぱり、ルーティって変だね」
ダーズは笑う。
「何も言ってないのに、泣くんだもん」
こんな簡単なことでも君は救われたはずなのに。
「人間は愚かな生き物だ」
キーラはルーティの手を握るダーズの手の上にその手を重ねながら。
「煮えど洗えど淀みが生まれる。水面下の氷塊の様に欲に眩んで戯言を宣い自ら争いに身を投じる愚者が殆どで幸運にも善を孕んで願えるのは一握りだ」
けれど。
「その一握りに──遠く屠った筈の心を打たれて神々は世界諸共甘やかすのだろう」
何処までも見透かした天色の目を細めて肩を竦め、キーラは口角を持ち上げて小さく笑みを零す。
「可笑しな話だ。創造神も破壊神もいい加減認めてしまえばいいのに」
何処か憂いを帯びた声音で話した後で。
「お前は私達にとっての光だ」
改めて。キーラは柔らかく微笑みかけながら。
「……ありがとう」