エピローグ



彼のことを思い浮かべすぎたが故の幻覚でもない。本人──いや本神が確かにそこにいるのだ。口をはくはくさせて狼狽するルーティの横で銃を構える音がして慌てて振り返って見てみたが何故だか発砲音は鳴らなかった。ウルフと同じく目を見開く。

「弟に物騒なものを向けてはいけないよ」

囁く声が。

「いい子だから下ろしておくれ」


脳の奥にまで響く。


「お兄様っ!」

気付けばウルフは銃を構える腕を下ろしていた。

これは──洗脳によるものだ。恐らく脳に直接呼びかけることで神経や筋肉を支配し本人の意思とは裏腹に従わせたのだろう。兄のキーラの参上に歓喜の声を上げるダーズに反して二人はこの状況に顔を強張らせていた。噂をすれば何とやらとはよく言ったものだが何も本当にならなくていいじゃないか。

「だめだった?」
「好きにしていいとも」

此方の気も知らずふたりは寄り添う。

「兄の私が来たのだからね」


何の下準備もなく鉢合わせてしまった。洗脳による効果は見せしめられている。夢ならばどれほどよかったでしょうなどと歌っている場合でもない。これから応援を呼ぶのでは遅すぎる。

下手に動こうとすればどちらかの洗脳の力が働いて動きを封じるのだろう。此方が大人数なら気を逸らせたのかもしれないが対等の数というだけで不利に働くのは一種のバグでしか。素直に応援を呼びかけつつ駆け付けてきてくれるまでの時間を稼ぐか──


「ルーティ」


気付いた時には目の前にいた。

今度は正位置で。


「ありがとう」

一か八か近距離で雷を放って対抗するしか、

「へっ」

ぎゅぅ、と手を握られて。

「……え」
 
 
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