エピローグ
町外れにある小さな森。碌に整備もされていない獣道を敢えて外れて草木を掻き分けながら突き進んだ先に目的の場所はあった。
「コイツは」
「うん」
頷いて応える。
「少し前に一緒に来たところだよ」
それは──巨大な穴だった。
直径五十から百メートル近くあるであろう大穴は数週間前に訪れた時と何ら変わっていない。まるで巨大な生き物のようにぽっかりと口を空けて寂しくそこに存在し続けるそれの正体をあの時はよく分からなかったが今なら理解出来る。
この穴は。
ダーズが堕ちた場所だったんだ。
今のレイアーぜがある場所からこの場所まで。突き落とされて真っ逆さまに──そこで命を閉ざすはずだったが兄であるキーラの"共に生きよう"という願いが呪われた形で叶えられた結果ダーズはその身を混沌と闇に蝕まれながら生命活動を続けることになってしまった。
今思えばキーラもダーズも僕の体を介して手紙交換のように真実のやり取りを行っていたのだろう。それならばいやに胸の奥を探り合っていたのも納得がいく。そんな不器用な彼らにとって互いだけを信じ深く愛し合い続けたマスターとクレイジーは何より羨ましく、そして疎ましい存在だったはず。彼らを激しく戦わせたのは当て付けもあったのだろう。
事件を通してみるとこれは人間の身勝手な欲望から始まった悲しい物語だったのだ。自分たちにはたった数日程度の出来事に見えても彼らにとってはどれだけ長く苦しい時間だったことだろう。
──何年先でも何十年先でも私はあの日の自分の取るに足らなさを後悔する。誰が何をどう言おうと私は一生をかけて引き摺って墓まで持っていく。
この思いが。
たった数年そこいらの相手に分かってたまるか──
分かってくれる人が出来てよかった、と微笑んだ父にユウはそう言い放った。今回の事件の中で彼らの過去を知っても想いを汲み取っても何もかも分かったなんて口が裂けても言えないと僕は思う。事件は解決したように見せかけているだけで後はもう彼ら自身のこと。繰り返すかもしれない。それでももう今度は彼らが共に生きて、彼ら自身の手で納得する形で清算しなければならないのだ。
「……お前」
ウルフはルーティを横目に。
「何やってやがる」
ルーティは。
瞼を伏せて静かに手を合わせていた。
「ヤツらは生きてンだろ」
「うん。……でも」
ルーティは手を合わせながら。
「ここで死んだのは……事実だから」