エピローグ
ペレジア大聖堂──正面にある大きく口を開けた入り口から窺える豪奢なステンドグラスにはこの国の大多数の人間が信仰する邪竜ギムレーの他にも何処か見覚えのある人物の別形態が描かれている。世界征服を目論む邪な神という意味では信仰の対象でもあるのだろう……今すぐにでも祈りを捧げる人間を叩き出して目を醒まさせてやりたいところだが。
「おい」
現実に引き戻される。
「店主が話してたのはこっちの建物だろ」
そう。
店主の男が指差したのは大聖堂──の隣にある如何にも誰も住んでいなさそうな民家。
「……あの!」
既に嫌な予感がしながらも縋るような気持ちで通りすがりの杖をついた男性に声を掛ける。
「この家って」
「ああ」
何を訊ねるより早く。
「『シンセ改ざん騒動邸宅』ね」
へ?
「し、しん」
「シンセサイザーって楽器があるだろ? そいつを改ざんして悪いことに使おうって輩が三日前くらいに捕まってねえ。その民家は跡地なんだよ」
ルーティは愕然とした。からからと笑う男性を前にこの時点でウルフの顔が見られない。
新世界創造計画。……シンセ改ざん騒動邸宅。
確かに音の響きは似てるけど!
「あ……ありがとう、ございます……」
口角が引き攣るのを感じながら礼を述べれば男性は元気に杖を振り上げて立ち去った。この場所に来るまで決して短い時間で済むはずもなく空は夕暮れ、煽りのようにカラスが鳴いて空を横切る。
「ルーティ」
「はい」
「頭出せ」
ですよね!
「いっっったぁぁい……」
でもでもだってこれは僕じゃなくて音の響きだけでここまで導いた最初の男の人が悪いのでは!?
……なんて嘆きは通用しない。ルーティは頭頂部に拳骨を頂いた結果見事なまでのたん瘤を抱えて涙を浮かべながら屈み込む。対するウルフは深々と溜め息を吐き出すとさっさと歩き出しながら、
「帰るぞ」
「ま、待って!」
舌打ち。
「まだ何かあンのか」
ルーティは頷きつつ立ち上がる。
「行きたいところがあるんだ」