最終章



それまで瞼を伏せていたキーラが薄く瞼を持ち上げるとラディスの手の指先から光の粒子が登り同時に足下が薄れ始めた。長いようで短い再会の時間にも終わりの時が迫っているのだと誰もが惜しみつつも静かに息を呑み見守る中で。


「おにぃのお父さんっ!」


声を上げたのは。

「僕たちが……いるからっ!」

ピチカは大粒の涙を零しながら。

「皆で皆のことっ、ちゃんと守るからっ!」


だから。


「安心していいからねっ!」


景色だけの話じゃない。

醜い争いが絶えなくても思想や思考に揉まれても。手を取り合い助け合って生きていく。


そんな"この世界"のことを。


俺は。

綺麗だと思ったんだ──


「父さん」

ルーティは口を開いた。

「ありがとう」

その言葉には様々な想いが込められていた。一緒に戦ってくれたことや皆のこと。

その意図を汲み取ってラディスは頷く。直後により一層多量の光の粒子が空気中に溶け出すのを見てルーティはハッと息を呑んだ。こうして出会えた以上の奇跡は望めないのにどうして口を衝いて出そうになるのだろう。唇を震わせて噛み締める。

「っ、」

堪え切れなかった粒を溢れさせながら口を開く。

「大好き、だよ……っ」


優しい笑顔は。

光の粒子となり東雲色の空へと消えて。……


「、……」

一つの龍のように螺旋を組みながら東雲色の空へ登っていく思念体スピリットを呆然と見つめるルーティに誰もが声を掛けるのを躊躇っていた。こうした空気感からの話の切り出しは難しいもので普段切り込み隊長たる面々も余韻に言葉を迷わせていたのだ。全てが終わった以上焦って話をする必要もないのだろうが、かといって長く続けていい空気とも思えない──

「わっ」

先手を打ったのはピチカだった。ルーティの横から飛び付いて何を言われるより先に開口一番。

「お腹すいちゃった!」


僕たちの日常が戻ってくる。


「なに食べたい?」
「誰が作ると思ってるんですか」
「じゃあ外食にする?」
「出費が嵩むから駄目です」

腕を組むリンクにルーティは苦笑い。確かにうちには天性の大食漢が約二名程いるし食費を考えるなら自炊が妥当かと思い直し、改めて向き合えば。

「リクエストは?」

訊ねるルーティにピチカが何やら目配せをするとディディー、トゥーン、ネス、リュカの四人が一斉に集まってきた。一体いつから示しを合わせていたのやらピチカの「せーのっ」といった小さな声掛けに合わせて五人は太陽に負けないとびきりの笑顔で。

「カレーライスっ!」
 
 
 
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