最終章
狡くて、酷い。
向日葵のように笑って太陽のように温かくて。
優しいのに、愚かで。
一人で突き進んでいく癖に寂しがり屋で。
「うわぁああぁぁん……!」
大切な人──
密かに顔を上げてその一部始終を目に涙する隊員に気付いたのだろう、ロックマンが口を開く。
「失うというのはそういうことだ」
紡ぐ。
「だからこそ俺たちは帰り着かなければならない。腕が上がらなくなろうが足を捥がれようが命だけは持って帰らなければならない。戦士になって戦うということは自分の命も守るということだ」
彼を責めるつもりはない。
想像し得ない葛藤もあったことだろう。だからこそ学ぶのだ。過ちは正せずとも次世代の学びとなる。
「……見るのなら、その目に焼き付けなさい」
格好だけは一丁前に簡単な言い付けも守れないとはと内心呆れつつも静かに締め括る。啜り泣く声に混じって弱々しい声が随所で疎らに返事を返す中で密かに小さく息を吐くロックマンの頬を。
一筋の涙が伝った──
「お別れの挨拶は済んだか?」
そんな風に口を開きながら進み出たのはマスターだった。皆まで言わずともそれは紛れもない合図で──けれどこれ以上は誰も騒ぎ立てなかった。誰が抗って制するでもなく未だしゃくりあげる声や啜り泣く声は止まずとも言葉を呑み込み見守っていて。
「偉いじゃん」
「当たり前だろう」
その様子を目に口々に話す兄弟にここでもやはりラディスは触れられないと知りながらも手を伸ばしてその頭を撫でるように手を動かしてみせる。
「……変わらないな」
「神様だからな」
「神様だからね」
口を揃えるマスターとクレイジーに。
「そっか」
皆からすれば仇なのだろう。
彼らもまた今回のように身勝手な思想や思惑でこの世界を巻き込んで果ては破滅に陥れようとした。そんな彼らを自らの命と引き換えにその手を掴んで引き摺り出したのが自分だ。あの時は無我夢中だったとはいえ今思えばまだ神様に成って間もない彼らに枷を背負わせてしまったのではないかと思う。
それこそ。
願いではなく呪いをかけてしまったのではないか。
「そうでもないよ」
「そうだな」
心を読まれたのか否か。思考に対する回答であるかのような発言にラディスはぎくりとする。
「だって──それは僕たちが選んだことでしょ」
小さく目を開く。
「ちゃんと救われてるよ」
ああ。
「ていうか相変わらずだね」
「人のこと言えないな」
「神様だけどね」
そんな風に。
また。俺は狡いことを。
「お前との約束は一日たりとも忘れていない」
……だから。
「安心して還っていいよ──ラディス」