最終章



……そうだ。何を勘違いしていたんだろう。

どんなに苦くてもこの現実だけは呑み込み受け入れなければならない。この人はずっと前に死んでいてこの騒動の中で偶然思念体スピリットという形で現れてずっと一緒に戦ってくれていて。奇跡を超えた事象の中でそれが永遠だと錯覚してしまっていた。


在るべき場所と在るべき姿へ。

その言葉が示すのは。


「英雄殿」

沈黙を破って進み出たのはロックマンだった。

「お会いできて光栄です」

ああ、とラディスは微笑みかける。

「この世界の平穏は英雄殿のご活躍あってのものと予てより伺っています」

柔らかな笑みを湛えながら胸に手を置いて語る彼の大袈裟すぎる振る舞いには安心感すら覚える。

「買い被りすぎだよ」

ラディスは苦笑いを浮かべて、

「昔の話だ。どれだけ謳われても今は君たちの方が活躍してるんじゃないか」
「英雄殿の活躍に比べれば雀の涙程にも」
「この子はいつもこうなのかい?」
「う、うん」

話の腰を折るようにロックマンを指差して小首を傾げるラディスに失礼じゃないかと思いつつも強くは否定しきれずにルーティは空笑い。

「本当に」

ロックマンはその目に憂いを帯びながら。

「もっと早くお会いしたかった」


そう言ってロックマンは軽く会釈をすると一歩引き下がった。何をするものかと目を見張っていれば軽い目配せで足早に整列したフォーエス部隊の面々を背にしながら神妙な面持ちで向き合うと。

「英雄殿の面前だ」

改めて胸に手を置きながら。

「全員──最敬礼でお見送りを」


音を揃えて跪き、頭を下げる一連の動作は感心するものもあったがすぐにその意図は汲み取れた。

「何だよ。もう少し見てみたかったのに」
「それが駄目なんだよ」

素直に頭を下げながら尚唇を尖らせて文句を垂れるパックマンにマークが小声で諭す。

「本当に辛いのは。……」
 
 
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