最終章
直前まで気付けなかったのは彼らにしては珍しくうわの空だったからだと思う。だから僕が体の節々に電気を跳ねても飛び出す瞬間まで反応出来なくて。
でも。それって。
"嫌な予感"だと思う?
「ルーティ!」
無我夢中で大空に飛び込んだ。
目指すはこの世界の底へ墜落していく二つの影。
「っ、!」
この手が届いたところでその先をどうするかまでは決めていない。でもまず大前提として届かないことには──そう思っていた矢先ルーティの前に最初の難関が立ちはだかる。──負傷したキーラとダーズの傷口から溢れ出した血液が球体の形を維持しながら浮遊したかと思うとそれぞれの血液が彼らの使役していた羽根や触手に変化したのだ。
ただし敵性はなく謂わば抜け殻のようで──しかしキーラとダーズに接近する上でこれは大きな弊害となる。一つや二つといった話ではないのだ。
──大丈夫かい! ルーティ!
「……うん!」
父親の声に答えながら電撃を放って妨げとなる個体を中心に羽根や触手を砕いたがその都度反発による空気抵抗が発生してふたりがより遠ざかっていく。やむを得ず回避した羽根や触手を振り向いて電撃を撃ち反発を狙ったところで距離は縮まらず。
これじゃ、間に合わない──!
「、!」
目前にまで迫った羽根が砕かれた。
だがそれは自分が放った電撃によるものではない。
「余所見すんな!」
この声は。
「っ、クレイジー!?」
風を受けながら現れた影の正体は。
「僕が壊す!」
驚くルーティの横でクレイジーは左目を紅く瞬かせて左手を薙ぎ払い発動した破壊の力によって妨げとなる羽根や触手を一瞬で砕いた。呆気に取られる中で今度気配を察知したルーティが正面に向き直ると瞬間転移で少し先に参じたマスターが右目を蒼く瞬かせたと同時に右手を薙ぎつつ指を鳴らし落下する方向と並行に透明な板を転々と創り出して。
「マスター!」
「それを足場に使え!」
意図を問うより先にマスターが答える。
「僕たちがこんだけ目を掛けてやってるんだ!」
ルーティは頷いて以降羽根や触手の処理は任せつつマスターの創り出した板を蹴り出して急ぐ──が。
「絶対に成果を、」
不意に発言が途切れて。
「ッづ!」
「ぐ、」
神力もそれほど残されていなかったのだろう処理し切れなかった羽根と触手それぞれがマスターとクレイジーに衝突し一瞬にして距離が開く。
「マスター! クレイジー!」
思わず振り返って見ようとするルーティに。
「っ……構うな!」
マスターが力の限り叫ぶ。
「行け!」