最終章



硝子がひび割れたような音が響いた。

ルーティが顔を上げればまるで被せ物をしていたかのように随所で雲や空が剥がれ落ちていく不思議な光景が広がっていて──恐らくこれはキーラが神の座を降りたことでこの世界もまた元の姿を取り戻しつつあるという確たる証拠なのだろう。


戦いは終わったのだ。


「……マスター。クレイジー」

ルーティはその光景を呆然と見つめながら。

「これでよかったのかな」

もちろん真っ当な答えが返ってくるものとも思っていない。これまでの言動からふたりが彼らにどんな思想を抱いているものか想像に容易かったから。

「……そうだな」

だからこそ予測を外れた少し遅れたタイミングでの返事に違和感を感じて振り返って見たのだ。

「よかったんじゃない。これで」


どうしてそんな風に目を背けるの──?


「っ……」

その瞬間感情が込み上げて胸の内側で熱が広がるのが分かった。ルーティは急ぎ足場の端で両手両膝を付いて落ちゆくふたりを覗き込みながら奥歯を噛み締める。顔を歪ませる。

僕に出来ることはもう何もないのか? これが結末なら一体何処で間違っていた?


──私達ならッ!

絶対に! 必ず最高のエンドを導き出せる!


それがッ!

私達"スマッシュブラザーズ"なのだからッ!


「……っ」


僕たちは戦士だ。

弛まぬ勇気と正義の心で立ちはだかる壁に幾度となく挑み立ち向かい打ち砕く。ただの人間でもなければ模造品でもない一人一人が個の心を持った未来を切り開く希望の象徴"スマッシュブラザーズ"。


"この世界"を救いたい。

優しくて温かい元の日常に戻りたい。


でも、僕は。

どんなに甘くても愚かでも。


彼らだって救われる未来を導き出したい──


そう誓ったじゃないか。


また、怒られるんだろうな。泣いたり叫んだり心配させたくないな。

ピチカに小さな拳で太鼓みたいに叩かれてフォックスに力一杯抱き締められて──リンクには夕飯抜きとか言われちゃうかも。それは流石に酷だよって真面目な顔でカービィが庇ったりしちゃってさ。甘やかすなってメタナイトが怒るのをマルスがまあまあって宥めてそれから、……誰が何を言うのか容易に想像がついてふっと胸が軽くなる。


まるで未来を予知したみたいに鮮明で。

ただの妄想にはならないって自信が沸き立つ。


だから大丈夫。

他の皆や神様に笑われたって──僕は。


「ルーティ」

胸の内側で声が響く。

「それでこそ──俺の息子だ」


ただの無茶や無謀な喜劇で終わらせない。

必ず救い出せる。……これが。


最後の戦いだッ!
 
 
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