最終章
弟が虐げられているのは知っていた。
他より光がか弱いから何だ。不出来だから何だ。
そんなものは微々たる差ではないかと。
知っていて言い出せなかったのは無論弟を守る為でもあった。逆らえば劣悪で穢れた仔虫共は弟を盾に逆手に取る事だろうと読めていた。だからこそ光を分け与える名目で私は弟に願い続けたのだ。
共に生きよう、と。
天空人の願いは光を代償にして必ず叶えられる。
私が願うのは愛する弟との幸せだ。それは即ち共に過ごす事に他ならない。共に生きてさえいればいつかこの楽園に見せかけた鳥籠から抜け出して生を全う出来ると純粋無垢に信じ込んでいた。いつか訪れるその瞬間こそ光の祝福等ではなく自らの手で叶えたいと夢見ながらも神に縋るように保険のつもりでその時の私は安易な思考の下刷り込んだのだ。
そうして。
私の願いは酷く捻くれた形で叶えられる。
まるで呪いそのものだった。混沌と闇に蝕まれた弟はかつての健気で愛くるしい雛鳥を連想させる姿等見る影もない。だからといって愛せない等といった愚かな思考の転移があってなるものか。
あれは紛れもない愛しくて可愛い我が弟だ。
「お前の様な酷く見窄らしく穢らわしい塵芥を弟等と受け入れるつもりはない」
疎ましい。憎らしい。
知らず存じず胡座をかいて息衝く生き物の全てが。
変わらぬ顔で時を刻むこの世界の全てが。愚かにも最後まで信じ続けてきた結果、負の感情に堕ち切れない光の写しと変化を遂げた自分が。
吐き気を催しながら涼しい顔で嘘を吐く自分が。
「こんな世界は終わらせてあげるからね」
ああ。……そうしよう。
「一緒に死のうよ。お兄様」
お前が望むのなら呪いを断とう──
あの身を灼けるのは対となる私の光だけ。この身を裂けるのも対となるお前の宿した混沌と闇だけ。
共に生きられないのなら。
何を今更迷う事があるものか。
責任を負おう。
私は。この先何百何千何万と時が経とうと必ず弟と共に罪を抱いてこの世界の底に堕ちる事を誓う。
愛しき我が弟よ。
ダーズよ。
どれだけ憎まれ口を叩かれようと何であろうと。
私の心はお前と共に。
いつか。いつか。
その混沌と闇に侵された体を抱いて。
嘘偽りのない私の声が。
聞き届けられたならそれで。……