第二章



……え?

「中継が繋がっております」

聞き間違いだろうか。亜空軍とかハンドとか。普段他人の口から耳にするべきではない単語がさも当たり前かのように──彼らが動きを見せないおかげでいい加減幻聴まで聞こえるようになってしまったのかもしれない。

平静を装っているつもりでもルーティを初めとした誰もが釘付けだった。間もなく画面が切り替わると映ったのはなんとあの司令官である。薄笑みを湛えるその人に何故だか見つめられているような感覚に陥って口の中が乾く。

「ごきげんよう」


白の軍服が際立つ国の最高指揮官。


「諸君──我々は遂に亜空軍の首領である創造神マスターハンドと破壊神クレイジーハンドの身柄を拘束することに成功した」

カメラが切り替わる。

「ま、っ」

……声を上げてしまうところだった。

次の画面に映し出されていたのは確かにあの兄弟だったのだ。先日遭遇した時と同じく彼らの象徴とも言えよう白い衣装を身に纏った彼らはまだ真新しい恐ろしいばかりの記憶とは裏腹に腕を後ろに回され縄で拘束されている。

「この双子は」

司令官は歩み寄ると。

「幾度となく世界を恐怖に貶めた」

マスターの髪を鷲掴みにして顔を上げさせる。

「……!」

蒼海のような眸子。間違いない。
 
 
4/51ページ
スキ