最終章
窮地からキーラを救い出したのは案の定ルーティだった。あの瞬間クレイジーが気を取られた隙にワープスターの誇る光を超えた速さで接近──伸ばしたその手で彼の手を捕まえて。
「自分が何やってるのか分かってるのかよ!」
「分からない僕じゃない!」
ルーティはキーラを引き上げながら反論する。
「でも状況が違う! 今の状態の彼らは自分たち相手に勝ち目がないってふたりだって分かってるはずだよ……だったらもういいじゃないか!」
マスターとクレイジーが納得いかないのは分かる。自分たちをここまで貶めた相手なんだ、プライドが高い彼らに許せるはずがない。
許さなくてもいい。彼らが身勝手な理由で無関係な人達だけじゃない世界さえ巻き込んだのは事実だ。
それでも。
「お望みならお前ごとブッ壊してやるよ!」
殺意を向けるクレイジーに。
「やってみなよ!」
ルーティはワープスターの上に立ち上がる。
「僕は絶対にそんなことさせない!」
青の閃光を迸らせる。
「だって」
睨み付ける。
「キーラとダーズは!」
次の瞬間だった。
「!」
ワープスターが弾かれるようにして足下から離れたのだ。墜落を余儀なくされるかと思いきやルーティの体はその場に固定されたかのように空中浮遊──それがキーラの施した光によるものだと知ったのは後ろから体を重ねつつ回された手のひらの温もりに気付いたからで。それ見たことかと一部始終を見守っていた誰もが息を呑んだことだろう、ルーティは焦燥に冷や汗を垂れながらおもむろに視線を遣る。
「、キーラ」
「神の言い付けに背く愚かな仔羊よ」
囁きかける声が頭に響く。
直後に猛烈な違和感と吐き気を覚えて。
「え、ぁ」
静かに目を見開く。
「その身を委ねて降伏しなさい」
キーラの手が。
衣服も皮膚も血肉も何もかも透けて。
中に……入って、きて……っ
「クレイジー!」
マスターが叫んだ。
「あのクソ馬鹿!」
それに応じてクレイジーが飛び出す。
「足手纏いになることばかりしやがって!」