最終章



ダーズはその表情に暗く影を落としながら。

口角を不気味なほどに持ち上げる。

「──!」

混沌と闇の化身を貫く筈だったエネルギーピラーはその先端部を失っていた。すぐに両者との間に差し込まれた羽根によって砕かれ妨害されたものと気付いたが間髪を入れず光線が一閃を引いてクレイジーを背中の上部から下腹部に向かって貫けば、堪らずダーズは嗤い出す。髪を掴みながら狂ったように。

「ふふ……あははっ! オレをね? 殺したいのは破壊神だけじゃないんだよ?」

クレイジーの体が揺らぎ、落ちていく。

「ばいばい──」
「──お別れの挨拶は済んだか?」


戦況の変化が目まぐるしい。


「ッ!」

背後に回り込んだ上でそっと肩の上に右手を置き耳元で囁きかけたのはマスターだった。そうしてダーズが気付いた時には遅く半径二メートル程の大きさの薄青色の四角い防壁が囲うように展開されて。

「だから安直だって言ったんじゃん」


この声は。


「あんなので僕をやれたとでも思ったの?」

防壁を挟んだ向かい側で。

「死なないよ」

口端や損傷部に赤い血を垂れながら。

「だって僕。破壊神だから」


キーラの放った光線がその身を貫いたのは紛れもない事実なのだろう。だがしかし文言の通り──中の臓器を二つ三つまとめて射抜く死に至らしめる不意の一撃を彼は破壊の力で凌ぎ切ったのだ。

破壊したのは死亡の可能性フラグと他に有り得るのだとすれば痛覚か……それにしたって漠然とした違和感を感じる。マスターもクレイジーもキーラの策略によって神の座を下ろされ神力さえ枯渇させられているはずなのにあの様子は──そこまで考えたところでルーティはとある思考に行き着きハッと息を呑む。


「……まさか」


可能性がないとは言い切れない。

例えばキーラとダーズ共に神力を枯渇させて疲弊しこの世界自身も天秤を元の主人たるマスターとクレイジーに向けて傾け始めているのだとしたら──?
 
 
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