最終章
癪に障るのは覚悟の上だった。
「危ないッ!」
咄嗟に声を上げたのは誰だったのか──恐らくはX部隊のメンバーよりは近い場所で戦っていたフォーエス部隊の隊員の内一人だろう。兎角直後死角から飛び出してきた触手がワープスターに追突してくれたお陰でルーティの体は大きく揺らいだ。敢えなくそのまま落下となるところを既の所でカービィが腕を掴んだがその一連の流れでワープスターの高度がガクンと下がり不利な状況へと転じてしまう。
「堕ちればよかったのに」
ダーズの声。
「ボクみたいに」
フラッシュバックする。
「残念だなぁ」
落下しなかったことを悔いているのではない。あの謎の異空間の中で自分達の過去を綴った記憶を曝け出したにも関わらず理想とはほど遠い言動の数々に失望に近い感情を抱いているのだ。
「っ……僕は」
ルーティは眉を顰めながら。
「君たちの過去を知っても何も分からなかった」
でも。
「何も分からなかったけど──今のこの状況も、これからの結末も絶対に誰も幸せになれないって! 正しくないんだってことだけは分かる!」
「じゃあさ」
それが不意に糸が切れたかのように。
「どうすればよかったの?」
首を傾げながら。
「混沌と闇にこの身を委ねなければよかった? お兄様に会いに行かなければよかった? この世界を呑み込まなければよかった?」
問い掛けの連続にルーティは思わず口を噤んだ。
「この世界が今の世界になるよりもずっとずっと昔の過ちを今更どうやって正すの? 全部撤回したら救われるの? 無かったことになるの?」
言葉が出てこない。
「そうだよ本当はもう気付いてるんだよおれもオレ達もぼくとボクのお兄様も」
不意に頭を垂れたダーズの周囲に黒の靄が浮かんだかと思うと虚空にぽっかりと穴が開かれてそこから幾つもの触手が覗いた。これでもフォーエス部隊が戦力を削ぎ落とすべく立ち回ってくれたというのにまだこれだけの力が残っているのかと息を呑む。
「だから、ね」
そうしておもむろに頭を擡げれば髪と髪の隙間から
「ぼくはオレ達を信じるね?」