最終章



◆最終章『終点』



遥か上空で延々と光と闇を交える双子の化身。提示した最善策を振り払われるどころか平手を打たれて沈黙に落ちる破壊神と静観する創造神。

まさか掌を返すはずもなければこの盤面で出鱈目を言うような人でもない──ルーティはゆっくりと振り返り向き合いながら息を呑む。ロックマンは目と目が合うといつものように屈託のない笑顔を返して空を見上げた。

「……嘗められたものだな」

呆れたように息を吐きながら、ぽつりと。

「有象無象に邪魔立てなど到底不可能と踏んで選び取った最期の舞台が広大な空とは余程目が肥えているものと見受けられる。兄弟と二度とない逢瀬を興じた後で"この世界"と共に堕ちようなど贅沢以外の何物でもない……これは我々も痛く苦しい後悔の味を知らしめる必要がありそうだ」

この状況下においてもこの饒舌っぷり。毎度のことながら舌が絡まらないのだろうかと感心する。

「さて。本題だが君の要望としてはあれらに"声が届けばいい"のだろう?」
「う、うん──」
「もちろん五体満足でね」

割って入るように口を挟んだのはカービィだった。いやいやそれは当たり前だろうとも思ったが次の瞬間「おやおや」とロックマンは呑気に笑みを零してみせるのだから遅れて気付いてぞっとする。

「片目片腕くらい無くてもどうとでもなると先方が証明してくれているが」
「切って落とされたのと望んでそうしたのとではワケが違うでしょ。何だったら本神ほんにんたちに直接聞いてみなよ一緒にすんなって怒られるから」

……よく分かってらっしゃる。

「こいつ相手に温情とか求めない方がいいよ」

カービィはルーティに対して釘を刺す。

「ちゃんと話は聞いとけってこと」
「すみません」
「……だ、そうだ」

ロックマンはわざとらしく肩を竦めて息を吐いた。そういう風に言って投げかけるいうことは彼以外にも同一の意見を持つ正義部隊隊員がいるということなのだろうから恐ろしい。ルーティは狼狽を悟られないようにぐっと息を呑み込んで話を引き戻す。

「考え、というのは?」

そうしてロックマンは改めて空を見上げる。

「彼らの周囲に足場を作る」


……へ?


「出来るな? スティーブン」
「ハッハッハーコイツは一本取られたぜ!」
「えっと、」
「次に彼らの攻撃の大部分である羽と触手を無力化及び切除する」

気圧されたルーティは遂に口を噤む。

「イレブン。移動はお前に任せた」
「全員移動するのか?」
「いや。先陣はSPが請け負ってくれ」
「御意に御座る」

秘密結社『SP』の代表取締役を担うミカゲはそうして視線を受けると深く頷いた。

「それと」

ロックマンはその本人を振り返りながら。

「ベヨネッタは俺と一緒に先陣に加わってウィッチタイムを使った補助を頼む」
「オーケー」
「負担をかけるようですまないな」
「お安い御用よ」

無茶苦茶な作戦でしかないように見えるが誰も反発しない辺り成功を確信しているのだ。それが一パーセントでもそれ以下でも──いち抹の可能性がある限りそこに正義は途絶えないのだと訴えかけているようで見ているだけで自然と勇気付けられる。

「ルーティ」

不意を突くように呼び掛けられて。

「我々が請け負うのは料理の下拵えだけだ」
「う……うん」
「仕上げは派手に頼むよ」

そうして作戦を実行に移すべく進み出るロックマンの背中を呆然と見つめるルーティにカービィは。

「今、分からなかったでしょ」
「……ごめんなさい」
 
 
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