第十三章
何を、考えて──スピカの何気ない発言にルーティは妙な引っ掛かりを感じて静止していたが不意に紐解かれたようにハッとする。
かつて愛し合っていた唯一無二の兄弟──引いて裂かれても天と地の存在に成っても尚対峙する彼らの目的は一方を殺めて真実の神と成り"この世界"を光か闇かそのどちらかに染め上げる理想の創造ではない。彼らの目的はあくまでも双方にあるのだ。
そうして。
仕上げを成すのは自分なのだと。
その最期の舞台こそ、"この世界"なのだと──
「急ごう!」
ルーティはウルフを振り返った。
「あのふたりを止めなきゃ!」
「止めてどーすんの?」
口を挟んだのはクレイジーである。
「勘がいいのは分かったからさ」
呆れたように肩を竦めて息を吐き出しながら。
「後はちょっかいかけるタイミングでしょ」
「"この世界"を巻き込む前に殺すってこと!?」
「うるさ。何ヤケになってんの」
詰め寄るルーティにクレイジーは眉を寄せる。
「僕たち神様。お前ら模造品に決定権ないけど?」
追い討ちのように。
「お人好しなのは重々承知だけどたかだかイレギュラー相手に身勝手な巻き込みで世界を焼かれようとしてるこの状況分かってる?」
冷たく睨み付けながら。
「普段ヒーロー気取って好き勝手摘んでおきながらよく言うよ。御託はいーから後は僕らに任せて」
苛立ちを込めて吐き捨てる。
「足手纏い以下の役立たずの模造品どもは」
乾いた音が鳴り響いたのはその直後で。
「る、ルルト……」
ルーティは呆然と名前を呼ぶ。
「……笑止」
間に入って平手を打ったのはその少女だった。
「私たちはスマッシュブラザーズだわ」
そのままの体勢で。
「戦士だわ」
影を落として言葉を連ねる。
「ただの人間でもなければ模造品でもない」
やがて顔を上げてきっと睨み付ける。
「神様でもない」
クレイジーはゆっくりと目を向けた後で向き直る。
「だからこそ私たちは違う」
彼女の勇姿を背中越しに見つめていたルーティは振った平手とは別の下ろされた手が拳を握りながらも僅かに震えているのを見た。
「観客席に腰を落ち着けるのは貴方達の方だわ」
思わず息を呑む。
「そこで見ていなさい」