第十三章
感傷に浸っている暇はない──ルーティとスピカは暫く見つめ合った後で互いに深く頷くとおもむろに立ち上がり空を見上げた。
上空では相変わらず此方側でどんなドラマがあったか知る由もなくかつて愛し合った光の化身と混沌と闇の化身が絶え間なくそれぞれの力をぶつけ合っている。双方力の衰えが窺えない辺りどちらが優勢か劣勢かといった話は無いようで、それに関しては一先ず安心か──密かに息をつくルーティをスピカは見逃さなかったが敢えて何も言わなかった。
事態は必ず収束する。
それが幸でも──不幸でも。
「やっと戻ってきやがったか」
僅かに苛立ちを感じ取れるような半ば呆れた声にルーティが後ろを振り返ればそこにはパートナーの姿があった。この態度ではあるがプライドの高い彼が文句一つ付けずに付き合ってくれている辺り事態の深刻さが垣間見える気さえする。
「ルーティなのか?」
続けて駆け付けてきたフォックスが訊ねた。
「そ、そっか」
静かに頷いて返せばこの反応である。
「父さんは」
何を言われるより先にルーティは口を開いた。
「"ここ"にいるよ」
自身の胸の上にそっと手を置く。
「そ……」
フォックスは少しの戸惑いを見せながらも。
「そっ、か……」
正面から向き合ったルーティもフォックスの横のウルフも彼の表情の変化を見逃さない。ふんと鼻を鳴らすだけに留まったウルフに反してルーティは言及するべく口を開こうとしたが遮るように。
「アハハハハハハハハッ!」
耳を劈く甲高い音に空気が震える。
「ふふ……あははっ」
刃物の如く鋭利に尖った羽先によって切断された触手が墜落する途中で黒の粒子となり消滅する様子が窺えた。それだというのに主たる化身は自身の髪をくしゃりと掴んで顔を俯かせながら。
「痛いイタい痛イ痛い……」
繰り返し呟いた後で薄笑みを浮かべて顔を上げる。
「……これが……お兄様と同じ痛み……!」
殺気が波紋を打つように振り撒かれる。
「何だよ、アイツ」
スピカは眉を顰めながら。
「早くどうにかしねぇとまずいんじゃねーか?」
「お心遣い痛み入ります」
「言ってる場合か」
「有難いことに先程から全く進展がないんですよ」
ダークファルコの返答に目を丸くする。
「……ずっとあんな調子でやり合ってんのか?」
「そうですよ。仲が良いですねえ」
平たく言ってしまえば先の見えない殺し合いを延々と続けているという話になるわけでこれがダークファルコが茶化したように仲が良いなど決して有り得ないわけだが──スピカは呆れた様子でぼやく。
「なに考えてるんだか」