第十三章
返す、……ラディスは自身の胸の前で手を握る。
そうして何気なく視線を落としたがそのお陰で不意に自分の首に掛けられているペンダントの存在に改めて気付いた。服の内側に仕舞い込まれたそれを引き出せば反射による銀の光沢と直後に映し出される息子の顔に糸が解けたように表情が緩む。
あれからどれだけの月日が経ったのだろう。これを託した最愛の友本人もきっと様々な想いを込めたであろうことが容易に想像がつく。いつまでも思いを馳せていたいがそんな時と場合でないことは人より抜けていると指摘されがちな自分でも分かる。
この戦いが終わったら。……
「返したくないの?」
クレイジーが訊ねるとラディスは首を横に振った。
「いいや」
そう言って瞼を伏せれば優しい声色で。
「ルーティ」
静寂の中を微風が吹いた。
黄金色の髪が靡いて少年は瞼をそっと開く。
「、……父さん……」
本当に小さくぽつりと呟いて。
先程から強く注がれる視線に顔を上げて応える。
「ルー、」
スピカが呼べば頷いた。
「……うん」
感極まる瞬間というものは。
今の状況を跳ね除けてでも訪れるもので。
「ルー!」
スピカは思わず飛び出して抱き付く。
「お前……っお前……」
恐らくなのこと全ての事情を説明されたのだろうと察してルーティはスピカの背中に腕を回しながら、一言一句応えるように繰り返し小さく頷いて。
「お前ほんと……無茶しやがって……!」
「……それはこっちの台詞だよ」
ルーティはスピカの肩を押して少しだけ離すと。
「スピカ」
正面から向き合って柔らかく微笑みかける。
「……おかえり」