第十三章
影が駆ける。
「、!」
その間魔方陣の縁をなぞるように光が迸った。その両方から浮かび上がるようにして生成された透明な壁は程なく圧し潰す勢いで容赦なく。
「……え」
潰された──はずだった。
「な」
上下から迫る透明な壁によって圧し潰される算段だったであろう標的の一人は隙間を抜けると足を止めないまま振り返った。クレシスが元いた場所に居たのは影で生成した人よりも一回りか二回り程大きなハンマーやフライパンを壁と壁との間に突っ張り棒のように立てて目論みを阻止する少年の姿。
「ゲムヲ……!?」
ラディスが思わず呼ぶとゲムヲは応えるように。
ひらひらと手のひらを振って。
「ぁ」
圧し潰される。
「……は」
あまりにも呆気なく。
「え」
容赦なく。
「ゲ、ムヲ……?」
絶望に視界が揺られる──
『呼んだ?』
「うわあぁあっ!?」
ギャグをやっている場合か!
「驚かせてしまい申し訳ないデス」
でもだってそりゃあ見ていた方向とは反対側で圧し潰されたはずのその子を抱えて並走する執事服の男性がいたら誰だってびっくりするだろ!
「い、今……どうやって……」
「必要な情報デス?」
「いえ……」
「咄嗟の判断で救出しました」
執事服の男基ロボットは答える。
「パートナー、デスので」
ああ、……成る程。
それは果たして理由になるのか? なるのか。
「……そっか」
何だか感慨深いな。
皆。あの頃とは違うんだ。
パートナー、か。
「前線に戻りますデス」
ロボットは変わらず淡々とした口調で。
「作戦が見抜かれた以上双子の抵抗及び攻撃が一層激しさを増すことが予想されるデス」
だから急に遠隔魔法が飛んできたのか──同じことが繰り返されないように痛烈な攻撃に対し回避と防御を上手く使い分けながらマスターとクレイジーをその場に留めている様子の仲間たちを遠く視認したラディスは思わず眉を顰めて。
「……分かった」
表情を暗く沈ませる。
「信じる」
その言葉にハッと顔を上げた。
「ここに居る皆が思っていることデス」
心臓が大きく鼓動する。
『ラディス』
ゲムヲが文字を書いたスケッチブックを掲げる。
『頑張って』
そうだ。
信じて戦っている仲間の為にも。
「……ああ!」