第一章
天空大都市レイアーゼ。数ある国の中で最も文化が発展している未来都市。よく言われているのが"百の知識を持って千の歴史を管理する"なんて一説だけど、今最近では他の国と文化を共有する好意的な姿勢を示しているのだから、そう遠くない未来この一説も書き換えられて次世代へと伝えられていくのかもしれない。
都心部より少し離れた緑の木々を抜けた先に僕たち特殊防衛部隊『X部隊』の拠点はある。
今日。数多の戦いを潜り抜けてきた戦士たちはそこで互いの腕を競い合っていた。それがこのバトルルームにある擬似体験型バトルシステムを利用したトーナメントバトルである。
負った傷も対戦が終了すれば自動的に回復するというのだから実際に拳を交えるより絶対的な安心感がある。そんなこのトンデモ近未来型超高性能システムを手掛けたというのがあの創造神マスターハンドなのだから頭が上がらない。あれで時たまシステムの様子を見に来てくれるのだから、果たして敵なのか味方なのか。
「お疲れさま!」
バトルトーナメント第三回戦の試合を終えたルーティが戻ってくると駆け寄ってきたピチカがタオルを差し出した。スポーツ選手に対応する女子マネージャーってこんな感じなのかな……
「あはは。ありがとう──」
「ルーティ・フォン!」
びくっと肩を跳ねて振り返る。
「一回戦で私に敗北を味わわせておきながら三回戦敗退とはどういうことなのよッ!」
刺さる刺さる。
「ま。ステージギミックに関してはご愁傷様としか言えないわな」
後から戻ってきたマリオは半笑い。
ポケモンスタジアムは一定時間毎にステージの仕掛けが切り替わるステージ──これがホームステージとは一概に言っても普段は堅い地面の上で手合わせしている程度なのだから、言い訳がましいだろうが切り替わる都度足を取られてその上でアイテムを投擲されてこの結果だ。
「まーまーいいじゃねェか」
そう言って宥めるのは。
「最後の瞬間まで何が起こるか分からねェってのがコイツの醍醐味なんだからよ」
先程怒号を浴びせたのはブロンドの髪の少女、ルルト。そしてそんな彼女の肩に手を置くのは大柄の男ラッシュ。今回初めてトーナメントに参加することになった彼らだがX部隊に新しく所属が決まったメンバーという話ではない。
「今回の試合も見応えのあるものだった」
拍手を送りながら前に進み出る。
「お疲れ様。ルーティ」
「……ロックマン!」