第十三章



標的であるマスターとクレイジーは攻撃による誘導に乗せられてそれぞれの能力で無効化しながらもその場から大きく移動するようなこともなく、その上で自分たちがそれぞれのチームに円を描くようにしてぐるりと囲われているという状況に強い関心が向いていない──最もこれは普段の彼らであれば有り得る筈もないのだが洗脳が知能を低下させているというのなら納得がいく。寧ろ好都合だ。

さて。……クレシスが視線を遣ると少し離れた位置で合図を待っていたダークウルフは小さく頷いた。嵐の前の静けさの中移動を終えて待機している他のダークシャドウに目配せをすると静かに瞼を伏せて──次の瞬間。勢いよく見開くのと同時に。

「……!」


能力を──発動する。


「テメェらッ、気を抜くな!」

声を上げたダークウルフは強く踏み堪えながら両手を地面に叩き付けると自身の足下の影を引き延ばして前方のマスターの影と混ざり合わせた後、その影から黒を伸ばして脚を捕らえた。そうしている間にも他のダークシャドウの働きかけにより巨大な黒の鳥籠が形成されて完全包囲に成功する。

「……くっ!」

時を同じくしてクレイジーも同様に囚われていたが彼らの能力の前では長く維持出来るものではないらしく直ぐさま硝子に罅が入るような不穏な音が響いてダークウルフを筆頭としたダークシャドウの面々は抵抗から来る痛みに顔を歪めた。その間十秒にも満たず──マスターとクレイジーそれぞれの隻眼が瞬いたかと思うと遂に鳥籠は砕け散ってしまう。


だがしかし。

それが。それこそが"合図"だった。


「はああっ!」

予め魔法を練っていたゼルダがそのタイミングで声を上げると同時に力を解き放てばマスターの足下に光で形成された黄金の大三角即ちトライフォースの模様が浮かび上がった。同じ頃パルテナが杖を振るえばクレイジーの頭上に巨大な光の魔方陣が浮かび上がり間髪を入れず光の槍を雨の如く乱射する。

「ギガファイアー!」
「ファイアボール!」

僅かであれ突破口を許せば作戦の仇となる──続けざま声を上げたのはマークとマリオ。それぞれの標的目掛け炎の柱と弾を打ち出し彼らの隣でルフレとルイージもまた同じ魔法を重ねて解き放つ。

「灼熱!」
「波動拳ッ!」

続けざま背中合わせで構えた両手を前方に押し出す動きで赤々と燃える波動の弾を放ったのはリュウとケン。彼らに続けてカムイとカンナが竜化させた腕から水弾を放てば弾は混ざり合い肥大化する。

「逃がさないわよ!」

動きを見せようとしたマスターの周囲に金色の魔方陣を展開してその中央から召喚された光の鎖によって右腕を捕らえたのはピーチである。そんな彼女の計らいに応えるべく銃を構えたサムスに続けてフォックスとファルコは発砲──その全てこそお馴染み防壁によって妨げられたが読み通りというもの。

「全員、怯むな!」

フォックスは声を上げる。

「攻撃を続けるんだ!」

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