第十三章



……だからといって。

こんな状況で。引き下がるわけには──

「!」

不意に肩の上に手を置かれてラディスが振り返るとそこに立っていたのはユウのパートナーであるリオンだった。リオンは小さく頷いた後に瞼を閉ざすと波導を滾らせ意識を集中する。


誰か一人が犠牲になるくらいなら。

がむしゃらでもいい。


皆で戦っていればいつか必ず──


「……!」

そんな声が確かに頭の中に響くように聞こえてきたのだ。これは恐らく彼自身の特殊能力を体の表面を薄ぼんやりと揺蕩う青の波導によって一時的に共有したものなのだろう。……ああ、そうか。


誰も。失いたくないんだ。

過去の経験や未来の想像が不安を掻き立てて。


何も信じ切ることが出来ない──


そんな中で。提示する作戦の要を前科持ちの自分が担うなんて知れたら素直に応じられるだろうか。その作戦が上手くいく確証がないのなら例え時間が掛かってでも今のまま攻撃を打ち込み続けた方が危惧した事態は避けられるんじゃないのか。

「おい」

駆け付けたクレシスが訊ねる。

「話はどうなったんだよ」


あの日。

嘘をついて置いていってしまった。


裏切ってしまった。


「……クレシス」

ラディスは意を決して向き合う。

「一緒に戦ってくれ」
「は? 当たり前だろ」

怪訝そうに返すクレシスに首を横に振る。

「この戦いで俺はまた"あれ"を使おうと思う」
「なっ……」

クレシスは目を開いた。

「テメェは一体何を学んだんだよ!」

顔を顰める。

「そもそもそいつはテメェの息子の体だぞ!」
「分かっているさ!」

被弾による爆風に煽られながら。

「一人でやろうなんて思っていない」

真剣な面持ちで。

「……君にも使えるはずだ」


極一部のピカチュウだけが使える特別な技。

使い手の命すら消耗する最強の奥義。


最後の切り札ボルテッカー──


「マスターは俺が。クレイジーは君に任せる」
「だから今度は一緒に死ねってか」
「まさか。君も話していた通りこの体は息子の──ルーティのものだからね」

一陣の風が吹き抜ける。

「必ず──共に生きて帰ろう」


本当に。

こいつだけは。


「テメェは死んでるだろーが」
「あ、あはは」

ふんと鼻を鳴らす。

「だとよ。それならいいか?……ユウ」
 
 
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