第十三章
ダークシャドウの影がクレイジーの足首を絡め取る。クレイジーは左目に赤の閃光を引きながら振り返ると自身の左手首の内側に噛み付いて容赦なく皮膚を引きちぎり──血液の代わりに溢れ出した黒が作り出した三本爪で影を引き裂いた。変化は留まることを知らず溢れ出した黒はそのままクレイジーに纏わり付き白目部分までもが黒く塗り潰される。
「────────ッ!」
大きく目を見開き天を仰ぎながら放った咆哮は声にも音にもならないまま空気を振動させて臓器をも揺さぶってきた。クレイジーが変貌を遂げた一方でマスターも呼応するように右手の甲に深く深く牙を立てたかと思うと何処でもない一点を見つめながら皮膚を破り同じく溢れ出した黒をその体に装甲の如く纏わせその周囲に五つの剣を創り出す。
「っ、あれは」
ラディスは思わずたじろいだ。……彼にしてみれば苦い記憶の一部なのだから仕方ない。
「ビビってんのか?」
反してクレシスは鼻で笑う。
「なんてこたぁねえ。予定調和だ」
……先程よりも。
遥かに強い──殺気を感じる。
「それとも今度は愛息子を道連れにすんのか?」
ラディスはぎくりとした。
「悪い冗談だよ」
クレシスは今度も鼻で笑った。
「返す余裕がありゃぁ世話ないな」
青の閃光と黒の閃光が迸る。
「──行くぞ!」
その時。
「な」
ダークシャドウの影が再びクレイジーの片方の脚に巻き付いて動きを止めた次の瞬間だった。
様々な音という音が全方位から。隙間を埋めるようにしてクレイジーに降りかかったかと思うと視界の妨げかの如く舞い上がった砂埃を突き破り放たれた青白いエネルギー砲がクレイジーの胸を──貫く。
「やったぁ!」
「言うなって!」
拳を振り上げるツツイを留めるコウ。
「、まだです!」
異変に気付いたしずえが声を上げた直後。
ぽっかりと空いた胸の空洞に幾つもの青白いブロックノイズが浮かび上がり縫うようにして跡形もなく修復すると、それまで不自然な姿勢で静止していたクレイジーはぐりんと首だけを標的に向けて。
「──隊長ッ!」