第十三章
◆第十三章『英雄』
風が吹き抜ける。
「……え」
フォックスは呆然と繰り返す。
「ラディス……?」
そんなはずはない。
彼は、確かに死んだはずだ。
……あの日。暗い鼠色の空の下で。
他でもない俺の腕の中で──
「信じた方がいいよ」
カービィが立ち上がりながら言う。
「さっきまでピカチュウの中に居たし」
「ピカ、……えっ?」
「見なかった?」
そういえば。マスターとクレイジーが此方に目もくれず激しい攻防を繰り広げるのを鎮圧させようと皆で奮闘していた時、まるで流れ弾みたいに自分の腕の中に飛び込んできたピカチュウが居たような──まさかあの時ファルコが言っていたのは本当だったのか? だとしてもいつからそんなことに? この状況は?……疑問が尽きない。
「来るぞ!」
意識を引き戻される。
「どうするんだ!」
「一箇所に固まるのは駄目だ!」
ラディスは前方数十メートル先で地面から数センチ浮遊して臨戦態勢でじっと此方を見張るマスターとクレイジーを見据える。
「強制コマンドの発動範囲はマスターの半径十五メートル……加えて視界に捉えた場合は距離関係なく強制コマンドの対象となる……」
「役割を分担して散らばった方がいいな」
状況を理解して続けるクレシスにラディスは頷く。
「足止めはダークシャドウの子達に」
「他はどうする」
「二手に分かれよう。──フォーエス部隊の皆はクレイジー、残りはマスターの相手をしてくれ!」
フォックスは意を決して構え直す。
「……具体的には!」
「荒療治、ということにはなるが強い衝撃を与えてマスターとクレイジーの目を覚まさせる」
相変わらず。
戦場という舞台に見合わないほど甘くて。
「キーラとダーズを止める為には、恐らくふたりの協力が必要になるだろうからね」
でも。
「放置したところで邪魔をしてくるようでは仕方がありませんね」
「ガッテン承知の助や!」
「世代がばれますよ」
安心する。
「本当なのよね?」
「おにぃはこんな時に嘘なんか言わないよ」
ピチカの最もな発言にリムは唇を尖らせる。
「……分かったわよ」
探ってる時間も余裕もない。
「その代わり」
手袋の裾を引いて嵌め直しながら。
「この戦いが終わったら話したいことが山程あるんだから! 覚悟しなさい!」