第十二章
無我夢中に。一心不乱に。
己が危険を顧みず飛び出したのは。
「っ……ラディス──!?」
迷いなどあるはずもなかった。
他でもない。愛する息子なのだから。
「く……、ルーティ……っ!」
傾斜するワープスターから飛び降りて電撃を後方に放ちながら加速して追い付いて──服の裾を捕まえながら名前まで呼んだが反応がない。完全に意識を飛ばしてしまっている。
「ルーティ……!」
繰り返し名前を呼んでも尚。
「く……っ」
このままでは。
地面に激突してしまう──
「、……」
かつての自分によく似た黄金色の髪。今は瞼の奥に閉じ込められている正義と闘志を宿した
ああ。
気付いていたよ。
この子の甘さは自分の生き写しだ。
追突までの時間がいやに長く感じる──まさか待ち望んでいるはずもないが今はこんな小さな体である自分にもまだ出来ることがあるのだとまさか神様が揶揄してくれているのだろうか。
なんて。
神様がそこまで優しいはずもないか。
「……ルーティ」
だったら。せめて。
最期くらいは。
「……!」
偶然か或いは必然か。
ルーティがそれまで胸の中に仕舞っていた首飾りが重力の関係で飛び出したのだ。見覚えのあるその形状は間違いなく自分が昔大切な友に親しみを込めて託したペンダントで。
そうだ。
可能性は残されている。
やれることがあるじゃないか。
「くっ」
ラディスは必死に掴まりながらルーティの胸元まで移動するとぎゅっと目を閉じた。意識の中で想像した暗闇だけが広がる世界の奥底にぽつりと置かれて眠る蝋燭の灯りに意識を集中する。
出来るはずだ。
俺が──
程なくして凄まじい音と共に砂埃が舞い上がった。それだって実際は雲なのだろうが──重要なのはそこではない。強制コマンドにより誰もが身動きの取れない状態のまま目の前で希望の象徴を失ったかもしれないという絶望が織り成す緊張感。
……ラディス、と。
クレシスは小さく口を動かした。