第十二章



本当は──彼らを傷付けたくない。

生まれた瞬間から身勝手な思想に巻き込まれて振り回されて。血を分けた唯一無二の兄弟さえ残酷に引き離されて──断片的な欠片を照らし合わせれば分かり合えるはずなんだ。遅すぎるなんてことはない今からだって間に合うんだって。


僕は。


「──ルーティ!」


次の瞬間だった。


「うわっ!?」

ワープスターが急激に速度を上げたのはラディスが叫んだ直後のことだった。大きく体が揺らぎ振り落とされそうになったもののどうにかしがみついて抗議の声を上げようとしたのも束の間、見覚えのある紫色の光が横切る。

「……!」

釣られて振り向いたルーティは目を見開いた。

「クレイジー!?」

そこに居たのは間違いなくあのクレイジーだった。マスターもクレイジーも下の皆が食い止めてくれているはずじゃ……いや、違う。皆にとって意図しない見当違いの出来事が起こったんだ──ルーティは目を凝らして下に広がる厚い雲の上に注目する。

「……!」

こうなってしまったからには何らかの方法で此方に参じてくれるものと思っていたがそれが出来なかった訳を目の当たりにする。マスターとクレイジーを止めるべく奮闘していたはずの戦士たちはあろうことか"全員"マスターの強制コマンドによって捩じ伏せられていたのだ。

「父さんっ、皆が──!」

訴えも虚しく衝撃に揺さぶられて。

「わ、」

恐らくは繰り返し投げ付けられていたエネルギーピラーの一つがワープスターの半身に命中してしまったのだろう──必死にしがみついていた手が離れたその瞬間に追いついたクレイジーがルーティの首根っこを掴んで手荒に引き剥がした。ラディスが振り向きざま小さな手を伸ばしながら何かを叫んでいたようだったがそれを認識するよりも早く。宙に放り出されたのと同時に。

「ッ──!」

拳が鳩尾を殴り付けて──叩き落とされる。


「ルーティッ!」


今度声を上げたのはこの事態に気付いた全員だったことだろう──強制コマンドによって這いつくばるような姿勢となり身動きの取れないその一人であったクレシスは歯を食い縛りながら恨めしそうに発動者たるそのひとを睨み付ける。

「くっ……そぉ……」
「おにぃ……っ!」

小さな体が無防備に落下していく。

「テレポートは……っ!」
「ッ……それが出来ればやっている……!」


間に合わない。


「ルーティ──!」
 
 
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