第十二章



慣れるのが早かったのはそのどちらもが今乗っているそれに負けないくらいの速度を出す戦闘機の羽根に乗った経験があったからだろう。赤い方に至ってはパートナーを乗せているにも関わらず振り落とす勢いの荒い運転で──なんてそんなことは今咎めている場合であるはずもない。

「──ルーティ!」

ラディスの呼ぶ声にハッと閉ざしていた瞼を開けば小麦のような色味を帯びた空が視界一杯に飛び込んできた。支配者たる光の化身は今現在此方に背中を向けているらしく今はもう見慣れてしまった巨大な白銀の光沢の美しい四対の翼が彼を囲っているのかその本体は視認できない。

「っ……」


今度こそ。


「キーラ! ダーズ!」

ワープスターがどういった生命体なのか知らないがまるで此方の動向を見守ってくれているかのようで一定の速度と高度を保ちながらゆっくりと飛んでくれている。声を上げて呼びかけるルーティにキーラは当然のように反応を示さなかったが対峙しているダーズは違ったようで。

「ふふっ」

キーラの向かい側──空を侵食するように滲み出した黒みがかった深い紫色のオーラの中心。次の攻撃に対抗するべく黒の触手を携えるその少年は小さく笑みを零す。

「呼んでいるよ?」

背中を向けているからといって気付いていないはずもなかった。けれどキーラは終始無言で右腕をゆっくりと持ち上げた後、薙ぎ払う。刹那その動作に応じるかのように四対ある翼の内二対がおもむろにキーラの側を離れたかと思うとパキパキと不安な音を立てながら捻れ、まるでドリルのように回転を掛けながらダーズ目掛けて突撃した。

かといって迫り来るそれに今更怯えるわけもない。ダーズが身振り手振りを行うまでもなく複数の黒い触手は身を挺して飛び込み軌道をずらした上で翼に絡み付く。

「彼らは双子のお気に入りだそうだよ?」

ダーズは後ろ手を組みながら。

「お気に入りなら一緒に遊んでいてほしいよね」


無邪気に。……悪辣に。


「──壊れるまで!」
 
 
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