第十二章
ダークウルフが眉を顰めていると。
「双子の権限を思い出せ」
少年は半ば強引に押し除けながら立ち上がる。
「ま……模造品の模造品にまで適用されるかまでは知らねーけどな」
まさか。
「対象が"スマッシュブラザーズ"に限り創造の力を駆使してあらゆる負傷、基破損を修繕することができるというマスターハンドの能力」
ロックマンが口を開く。
「地上に引き摺り下ろしたのは遺憾なくそれが発揮されたとして影響を及ぼす範囲までは暴けなかったから一先ずの保険といったところか。しかしながら距離が近ければ創造神の思考がどうあれ無意識下でも力が発動するものだと踏み切り交渉の為に自身を傷付けるとは──貴方もなかなかの無茶をなさる」
ダークウルフはゆっくりと立ち上がる。
「お前たちがリーダーを失えば困るように、我々も管理下を失っては後々に響くのでな」
そう語るロックマンをダークウルフは横目に見た。
──正義部隊の統領は全て分かったかのように(実際理解しているのだろうが)話してくれているが自分には実際問題さっぱり分からない。けれどこれがもし言葉の通りだとしたら、それだけの為に自らの命を実の息子共々天秤に掛けたってのか?
「不服だって顔に出てんな」
少年──基クレシスは小さく笑う。
「だがこうでもしなけりゃあんたらは延々意地張り合って止める気すら起きなかっただろぉよ」
肩を竦めて。
「納得がいったなら説明会は終いだ。……そろそろ真面目に戦場に戻らにゃツケが回ってくる」
そうして地面に視線を落とせば──笑み。
「……ほらな」
次の瞬間。
「、!」
例えるなら透明な水に黒の塗料を垂らしたかのように──じわりと。戦士たちの足下及び地面に黒く塗り潰された影がひっそりと生まれたかと思うと地響きを起こしたが直後ダーズの使役するそれと同じ黒の触手が突き出してきて──先程のキーラの放った光を各々の武器や技で食い止めていた正義部隊の面々はこれに対して反応が遅れてしまう。容赦なく襲いかかるそれに万事休すかのように思われた。
「テメーら、向かい討てッ!」
陰る。
「……成る程な」
ロックマンは感心したように呟いた。
「味方に付けるとこうも頼もしいものだとは」