第十二章



何かの比喩表現でもなければ気のせいでもない──事実、濁音入り混じる声で叫んだダーズの背後の虚空に亀裂が走ったかと思うと硝子の割れる音に似た音が響いて空が内側から破られその中からおびただしい量の触手が飛び出してきたのだ。

感動の再会に心を浮き立たせている場合ではなかったというわけである──思わず眉を寄せてしまいながらルーティが構えると挟むようにしてラディスとウルフが並んだ。

「総員、向かい討て!」

ロックマンが腕で払い示しながら叫ぶとそれまで散り散りになっていたフォーエス部隊の各隊員は瞬時に目の色を変えて──それこそ一閃尾を引く勢いで振り返り構えた。息つく間もなく襲いかかってきた触手をある者は特殊な技を使って弾き──ある者は武器を使って受け止め、またある者は斬り捨てて。ダーズは自身の髪をくしゃりと掴む。

「はーっ……はーっ……!」

青ざめて震える様子にルーティは眉を寄せた。

「っ……ダーズ、」
「こんな時に誰の心配してんだぁ?」


その声は遮るように。


「な……」

ルーティが振り返ったと同時に飛び込むような形で攻撃を受け止めたのはルキナだった。それでもどうやら掠めてしまったようで彼女のせっかくの藍色の髪がはらりと舞い落ちて──ルーティは目を開く。ルキナがその剣で攻撃を受け止めていた相手は鏡にそっくり写したような勇者の影。


「ダークリンク……!」


彼だけではない。

「ひゃははっ」

嗤う声。

「やっぱし俺らこっちのが性に合ってんね?」

銃声。金属音。

「存分に殺し合おうぜぇ?……正義部隊」


ダークシャドウ──!


「成る程、な」

ロックマンは目を細める。

「木を隠すなら森の中といったところか」
「そ。読めなかったっしょ」
「わざわざ探そうとも思っていなかったな」

ダークフォックスの蹴りを躱して。

「黙っていようがいまいが変わらない」

右腕の砲口が向けられる。

「──悪は等しく刈り取るまでだ」
 
 
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