第十二章
……沈黙が流れる。
マスターハンドとクレイジーハンドは確かに神である。けれど彼らはこれまで幾度となくこの世界を自分たちの理想とする世界に作り変える為に多くの犠牲を出してきた。様々な昔話や神話の中で等しく神様とはそういうものだと語られてきたがそれでも尚到底許された行為ではない。
「……いやだから最悪すぎない?」
パックマンはたまらず机の上で肘を付きながら、頭を抱えて吐き捨てるように呟く。
「マスターハンドとクレイジーハンドって」
「……そうだなぁ」
デイジーが言うとドクターは腕を組んだ。
頭を抱える要因はもう一つある。まさに今肝心のマスターとクレイジーの行方が分からなくなってしまっていたのだ。
それというのもつい先日何がどうしてそうなったのやら捕縛されていた彼らをあろうことか司令官自ら全国に晒し上げるような形で処刑しようという我が目を疑う場面でダークシャドウに邪魔立てされてしまったからで。そうなれば即刻捜索を命じられるものかと思いきや下されたのは司令塔の防衛に努めよという待機命令……
これに関しては危惧するまでもなく司令塔に戻ってくることだろう。そしてキーラを潰そうとするはず──願わくばそうした形で戻ってくるより先に合流して策を講じたいところだったが何を言ったところで現状況は後の祭りという言葉があまりにも似合いすぎていて道化師にもなれやしない。
「……俺」
ソラは膝の上で緩く拳を握って顔を顰める。
「何が正義なのか分からないよ……」
選び取れる最善は全て葬り去られた。
……切り捨てるべきは。