第十二章



マークは資料紙を手に説明しようとしたが諦めたように置いた。こればかりは何度も消したり書き加えたりとぐしゃぐしゃだったのだ。

「マスターハンドとクレイジーハンド。あのふたりが神力を使って創造や破壊といった特殊な技を駆使しているのは周知の事実だと思う」

マークは一人一人に目を配りながら説明する。

「神力は魔力と大きく異なる特別な力だ……神である特権と言ってもいい。彼らが神だからこそ神力を蓄える器を持っていて様々な生物からの信仰心を神力に変換して得ることが出来る」

会議室にはマークの声だけが響いている。

「一方で彼らが生み出したタブーにはそれが出来ない。神力を蓄える為の器のようなものはあるんだろうけど万能じゃない」

何故だと思う? と解を求めるようにして言葉を切れば気付いたカンナとカムイが口々に。

「神様じゃないから……」
「信仰から神力を得ることが出来ない……?」
「その通り」

マークは頷く。

「キーラの性質はタブーと同じなんだよ」


同じ──


「現段階での話だ」

タブーが禁忌の力を扱えるのも神力あってのことだがその神力はマスターとクレイジーが定期的に行っているメンテナンスの都度補充しているものである。似ている、ということは──と様々な思想が飛び交っているであろう空間にマークは水を差すかのように非情な言葉を落とす。

「今の状態ならいくら力を使わせたところで長くは持たずいずれ神力を枯渇させて無力化するだろうが双子に替わってこの世界の神になったらそれこそ誰にも止められなくなる……ということか」

クロムが腕を組みながら難しい顔で呟く。

「それを阻止できなかった結果がシュルクの視た全滅の未来に繋がるのだとしたら」

意図を理解したのであろうロックマンは短く息をついてマークの後に言葉を続ける。

「マスターハンドとクレイジーハンドを何としてでも守り通さなければならない……か」
 
 
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