第十一章
和やかな空気に顔が綻ぶ──けれど。
「さて」
話を区切るように。
「世間じゃ父親似なのは娘の方なんざ言うがね」
腕を伸ばした後にひと息。
「……どうよ?」
クレシスがにやりと笑って話を振ったのはこれまでのやり取りの最中全くの蚊帳の外であったミカゲとジョーカーに対してだった。
「実年齢よか若く見られるってのは誰だって悪くない気分なもんだ。違うか?」
「意地悪だな」
「面目次第も御座らぬ」
ここまでのやり取りが口裏合わせもないただの演技で熟せるはずもないと判断したのであろう二人の態度はがらりと変わっていた。ある種の山場は越えたなと密かに安堵したルーティが小さく息をついた次の瞬間である。
「──!?」
地響き。そして空気の揺さぶられる感覚。
「アハハハハハハッ!」
高らかな笑い声──
「おい」
クレシスは空を見上げて眉を顰めた。
「ありゃ何だ?」
そうして全員が同じように空に注目すると。
「……え」
表には白百合のような色合いと美しい光沢を。裏には極彩色の別世界を揺らし見るもの全てを魅了する硝子より繊細な螺旋した巨大な羽根。新生の神たらしめる光の化身キーラに相応しいそれは常に彼を護るように──その周囲に四対当たり前のように纏われていたのに。
厚い雲を突き抜けてゆっくりと落下していく。
破片を零しながら。
残酷に現実を突き付ける。
「……嘘」
誰もがその光景を目に言葉を失って尚脳裏に過らせたその言葉をカービィが口にした。
「キーラ、が……負けた……?」