第十一章
狸寝入りをする側で。話を聞いたことがある。
この世界が。双神の暴走によって崩壊の危機に瀕した時──自分の父は最後の切り札として禁じ手とされるボルテッカーを使用したのだと。
そして、その時。
命に換えても止めに入るであろう仲間たちを──影の勇者の協力で無理矢理隔てたのだと。
かつて共に戦った仲間たちは。
ただ。その目に焼き付ける他なかったのだと。
「お前もだぞ」
ルーティはびくっと肩を跳ねた。
「腐ってもコイツの息子だからな」
「いいとこ突くじゃん」
まさか自分にまで話を振られるとは。
「そ、そんなことしないよ」
「どうだかな」
気が利かないなあ!
「もうっ」
口を挟むウルフを不貞腐れた顔で振り返れば当の本人は白々しく目を背けた。たっ……確かに前科持ちではあるけれど──でもあれはあの時、ああしなければどうにもならなかったわけで──!
……なんて。心の中でつらつらと言い訳を並べたところで過去そうやって危惧する事態を引き起こしたのは事実。それを知りながらもう二度と同じことは起こすなと釘を刺しているのだ。
「蛙の子は蛙だな」
「俺はネズミだよ」
「はいはい。いつものやつね」
「ど、どういう意味なんだそれは」
「そのまんまでーす」