第十一章
ああ。……やっぱり。
否応なしに思い知らされる。
この人は。間違いなく。
スピカの父親の──
「……つまり」
クレシスはパッと手を離して。
「新生神様の目論み通りこの世界はまんまと洗われた挙げ句物語に関与しないモブは体まで失って魂だけ──その中でも運の良い俺みたいな連中は器を得て活動出来てるってわけだな」
呑み込みの速さが段違いである。
「なるほどなぁ」
ふんふんと腕を組みながら頷いた後。
「それで」
唐突に鷲掴んだのは。
「ピカさんの中に入ってるのは"ラディス"ってクソヤローで間違いねぇな……?」
おっとこれは。
「ぴ」
こうなることを予測していたのか逃げ腰だったラディスはクレシスに頭を鷲掴みにされながら怯え切った顔に加えてか細い声で。
「ぴかぁ……?」
「ラディスだな?」
急に空気感が。
「生きてりゃいずれこういう機会に巡り会えると思ってたんだこっちは」
纏うオーラが紛うことなき龍や虎。
「きっちり落とし前付けてもらわなくちゃなぁ……?」
あわわ!
「……クソがよ」
止めに入ろうと思ったのも束の間。
「一緒に戦うって話だったじゃねえかよ」
空気が急激に落ち込む。
「なのに。……勝手に死にやがって」
クレシスはラディスを解放する。
「……ごめん」
「謝って済む問題かよ」
「……ん」
「馬鹿がよ」
心なしか胸が締め付けられる。
「……もうしないよ」
「出来ねえだろ」
「あはは」