第十一章
まさか。……そんなことが。
もしこれがこの場を凌ぐ為だけの出任せだったとしたらあまりにも大胆すぎる──ルーティはそう思いながらも余計な口だけは挟まずに次の展開を待つことにした。
事態が動いたのは直後のことである。
「、!」
ミカゲがおもむろに腕を引いたかと思えばその場に土煙を僅かに残して消えたのだ。首を触れて軽く咳き込みながら反射的に目を向けた先──未だ双方譲らずといった激戦の音が止まない場所。その場所に向かったのは明白でルーティはふらりと進み出ながら声を上げる。
「ウルフ……っ!」
パートナーの声に気付いて狼の耳をそちらに傾ける動作をしたがまさか目までは離せない。今にも放たんとする電光を纏いながら接近して蹴りを繰り出す少年にウルフは舌を打ちながら冷静に回避行動を取った──その時。
「!」
目の前に飛び込んできたのは。
「……ぁ」
蹴り払いを回避されたが故のがら空きの懐に潜り込むように。けれど気付いて黒の電光を強く瞬かせるその様子に今更怖気付く訳もなく引いた腕を風を切るが如く一瞬の内に。
「す、」
倒れかかる影にルーティは青ざめる。
「スピカっ!」