第十一章
煙幕は未だ払われないまま電撃は右手首に巻き付いて捕らえたワイヤーを伝って──確かに何かに直撃したようだがそれらしい手応えというものを感じずにスピカは訝しげに顔を上げる。
「掛かったな!」
そう声を上げたが直後煙幕を突き破り飛び出してきたのはシルバーのダガーを構えて薙ぎ払わんとするジョーカー。気付いたスピカが右腕を引こうとするもどうやら何かに括り付けられてしまっているかのようで──重い。動けない。
「、何っ」
異変が訪れたのはその直後のこと。ダガーを構えた腕を自分が仕掛けたものとは別のワイヤーに捕らえられてしまったお陰で攻撃を振るえずに困惑するジョーカーに追い討ちをかけるように。
「聞き分けが悪いにも」
カービィの声。
「──程があるでしょっ!」
ワイヤーを放ったのはいつの間にかジョーカーの能力をコピーしていたカービィだった。ぐいと力任せに引けばジョーカーの体は向かって後方へ引っ張られるも身を翻してダガーでワイヤーを断ち切ることで引き寄せを回避。断裁されたワイヤーを回収した後で煙幕は風に払われて木の上に着地していた二人を見上げる形となる。
「先輩の話くらい聞いたら?」
眉を寄せるカービィに。
「戦うのは待とうよ」
「彼奴は諸悪の根源たる双神の駒」
ミカゲは冷たく言い放つ。
「敵の戦力が欠けている此の瞬間こそ好機──今根絶せずして如何にする」
そういうことか。
「あの時……彼を狙ったのは君だね」
ラディスが口を開く。
「……あの時って」
「忍びの彼の偽物がダーズにやられただろう」
その時の光景がフラッシュバックする。
「……まさか」