第十一章
寸刻前──上空。
「……そういうことだったんだね」
ようやく光の追尾から逃れることに成功したウルフェンの上。何故此方の与り知らぬところで正気を取り戻して立ち回っているのか──その理由をミカゲとジョーカーの二人から聞いたルーティは納得したように呟いた。
「ということは他にも?」
翼の縁に腰を下ろして小さく息つきながら訊ねるカービィに二人はそれぞれ頷いて返す。
「前々からよく頭が回るなとは思ってたけどさ」
途端にカービィは眉を寄せてしまいながら。
「三手先どころの話じゃなくない?」
「褒めているのか?」
「えげつなーって思ってるよ」
意図を把握出来ず疑問符を浮かべるジョーカーにルーティが乾いた笑みを零した、その時。
「────────!」
突如として轟いたのは空気をも震わす雷の音──直後現れたのは雲を切り開き天すらも貫く、黒を帯びた稲妻。発生源は然程大きくはない森の中。
「ウルフっ!」
その正体が他の何かである可能性など今の今更考えられるはずもない。ルーティが呼ぶよりも早く操縦席のウルフはハンドルを握ると速度を上げて絶えず稲妻を放出するそれのいる元へ。
「父さん……スピカ……っ」
ルーティは眉を寄せながら呟く。
冷たく見据える緋色の目には気付かずに。……