第十一章



雨音が遠く。……


──お前に何が分かるッ!


何も信じられないから見栄を張って。

空振って。遠ざけられて。


──信じてくれ。


爪を立てる勢いで差し伸べられた手に縋って。

歯を食い縛るほどに悔しくて。


──ごめんな。


何だよ。ふざけんなよ。

一緒に戦うんじゃなかったのかよ。


「……ラディス」


灰色の空が、何処までも。色褪せて見える向日葵畑の中心にぽつりと置かれた墓石が雨に打たれて冷たくなっていく。温もりを失っていく。


この手は。

もう二度と届かない。


いや。


目を覚ませよ。逸らすなよ。

そこにいるのは誰だ?


「ぐっ……」

まるで走馬灯かのように頭の中に流れ込んでくる景色にノイズが走る。鈍痛は鋭い痛みに変化して内側から執拗に叩き付けてくる。……思い出せ。


思い出せ思い出せ思い出せ!


「あああぁああ……ッ!」

痛い程に黒の閃光が跳ね回る。

「あぁあああぁああああーッ!」
 
 
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