第十一章
……父親。
「知っているのか」
分からない程度に歩く速度が落ちた。
「もちろん」
ラディスは知らず話を続ける。
「気性が荒くて喧嘩っ早いけど根は良い奴でね」
そうして思い返しては笑みを溢しながら。
「素直じゃなかったなあ」
何だろう。
懐かしい感じがする。
「名前は」
スピカが呟くとラディスは快く答えた。
「クレシス」
照れ臭そうに笑いながら。
「俺の、親友だよ」
鈍く深く心臓の音が響いたのは。
その直後のことだった。
「スピカ君っ!?」
何の予兆もなく前触れもなく唐突にその場に崩れ落ちて頭を抱えるのだからラディスは目を開いて駆け寄り身を案じた。そうしている間にがさりと近くの茂みが不自然に揺れるのだから、ラディスは不調の様子のスピカと茂みを交互に見ては顔を顰めていたが。
「、まさか」
一つの可能性が過れば愕然とした様子で。
「君は……本当は……」