第十一章



逸れた仲間たちにとりあえずは無事であることだけでも伝えてやりたいが連絡の手段がない。後先考えずに飛び込んだことは反省しているが自分の性格を思うとまた繰り返すのだろうなとぼんやり考えて苦笑が溢れそうになる。

一方でスピカはそんなラディスのことなど気にも留めないまま少しも迷う素振りも見せず森の中に足を踏み入れた。当然のように生き物の存在しないその場所は鬱蒼としているだけで何故だか息が詰まる。その間会話がないというのも原因の一つだろうと見てラディスは口を開く。

「スピカ君、は」

砂利を踏む音は留まらない。

「……よかったのかい?」

それは何を意図した質問だと問うようにスピカが足を止めないまま視線を寄越せば。

「ああ、ほら」

ラディスは割れ物でも扱うかのように。

「君は……ダーズの味方だろう?」


──ノイズが走る。


「覚えてない」

スピカは呟くように言って答えた。

「俺は」

ゆっくりと思い返すように。

「気が付いたら」


あの場所に。


「無理に思い出さなくてもいい」

ラディスは慌てて思考を巡らせる彼を止めた。

「……そうか」

脳裏の違和感がじわり波を引いていく。

「でも、少し残念だな」

ラディスは両耳を垂れながら。

「記憶があったら」

憂いを帯びた声色で。

「君のお父さんの話も聞いてみたかった」
 
 
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