第十一章
空が。……遠ざかっていく。
このままいけば自分の体は地面に酷く叩き付けられて見るも無惨な姿を野に晒すことになるだろう──誰が何を思うこともないだろうが、等とぼんやりと考えた後で自分をリーダーと呼んで慕う素振りを見せた黒い狼の存在が脳裏を過った。
それでも尚。
瞼を伏せれば掻き消えて。……
「スピカ君ッ!」
……は?
「捕まえたっ!」
大袈裟な声(状況が状況なのだから当たり前だが)にスピカが弾かれるように瞼を開けば腕にしがみつく黄色い生き物の姿があった。
「……何を」
「助けに来たんだ!」
ラディスは即答して続ける。
「俺に捕まってくれ!」
頬に青の閃光を跳ねながら意気込んで熱くなってくれているところ申し訳ないが。
「その体に?」
沈黙。
「そうだったあああ!?」
こいつは一体どういうつもりで安全な地帯から飛び出してきたというのだろう。兎にも角にも今の自分が人より一回りも小さな体であるという現状が頭からすっぽ抜けていたというだけでなく素直にそのまましがみつかれては却って何も出来なくなる可能性まで考慮していなかった様子で。
「かかっカービィ、いないっ!」
賑やかに汗を飛ばすのだから先が思いやられる。
「スピカ君!」
ラディスは慌てふためきながら。
「地面に向かって放電してくれるかい!」
そうこうしている間にも確かに地面は迫ってきていた。スピカはその事実を尻目に捉えた後で深々と溜め息を吐き出すと腕にしがみつくラディスはそのままにくるっと体を反転させて、地上に体を向けた後に手を伸ばし翳す。
「……捕まっていろ」