第十一章
これがダークシャドウなら本物だと分かった上での揶揄いで。X部隊ならそもそも疑いを掛けないくらいの違いがある。けれど彼らフォーエス部隊に限っては生易しい展開を望めない。悪は悪以外有り得ないと決め付ける彼らにとって今この状況は例え仲間でさえ警戒に値する──そこまで彼らの本質を理解できているだけ助かった。
「……証拠は、……ない」
自分に出来るのはもはやこれだけ。
「でも……僕はルーティだよ」
真っ直ぐ視線を逸らさず見据えながら。
「……信じてほしい」
ミカゲは尚も冷たく見つめていた。
けれど次第に緊張の糸が緩むのを感じたが直後彼はゆっくりと腕を引き武具を消失させる。ルーティが思わずへたり込むとミカゲもミカゲで打って変わって安堵の息をついた。
「……本物で御座るな」
父親の受け売りとはいえ。
つくづくそれが自分の口癖で良かったと思う。
「驚かせてすまない」
まさしく聞きたかった言葉を投げかけてくれたドミノマスクの青年の正体は案の定ジョーカーだった。ウルフはふんと鼻を鳴らす。
「敵と味方の区別も出来ねぇのか」
「それ、ファルコの台詞だよ」
「今この場に本人いねーだろうが」
お相手の警戒が解けた途端にこれなんだから──ルーティは小さく息を吐き出して。
「説明は」
遮るようにしてジョーカーが口を開いた。
「後にした方が良さそうだな」