第十一章



その内側で目を奪われるような美しい極彩の色が揺れる巨大な螺旋の羽を周囲に浮かばせて現れたのは光の化身キーラ。そしてその彼を守るようにして立ちはだかるのは白い衣に青い髪の──

「……マスター様」

ダークウルフがぽつりと名前を呟いた。

「そのようですね」
「どぉせ正気じゃないんだろ?」

続けてダークファルコとダークフォックスが話したがまさしくその通り、再会を喜んで油断をしてはいけない──防壁を展開してクレイジーの攻撃を無傷で受け止めたマスターの擡げた青色の瞳は紅蓮に縁取られていた。

願わくば再会さえしてしまえば彼らご自慢の愛とやらで洗脳から醒めてほしかったものだがそんな願いはいとも容易く打ち砕かれ、ふたりは強い洗脳に突き動かされるようにして対峙するキーラとダーズを差し置いて戦闘を開始してしまう。

「虫じゃなくて友達だよ?」

空間転移を使ってダーズは空間の正面に出る。

「世迷言を」
「お兄様には友達がいないの?」

煽るように首を傾ければ。

「成り損ないには縁の無い話だろうが」

キーラは目を細める。

「今でこそ御厚意でお力添えいただいている創造神さえ何れは我が身に手招く糧でしかない」

赤と青が激しくぶつかり合う中。

「そしてそれは其処におられる破壊神も同じ事」

ダーズはひと呼吸置いた後。

「……ぼくは?」

壊れた玩具のように。

「ぼくはぼくはぼくはぼくはぼくは?」


緊張の糸が限界にまで張り詰められている。

それを容易く。鋏で落とすように。


「邪魔だ」


ぶつりと切って落とされてしまえば。


「……お兄様」


誰にも止められない。


「は、……あは、あはは、……っはあ、ぁは!」


悲劇が始まる。


「──殺してやるッ!」
 
 
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