第十章



空間転移を使ってクレイジーのすぐ後ろまで移動したダーズは虚空をじっと見つめる。程なく変化は訪れて彼の視線の先で虚空はぐるぐると渦を巻いていくと今度半回転しながらその中心から徐々に穴を開いてその先に表の世界を示唆する黄金色の空を映し出した──が、直後クレイジーが紫に縁取られた左目に赤い閃光を引きながらダーズを振り返ってその視界に捉えたかと思うと叫び声を上げながら襲いかかったのだ。

「わぁ」

とはいえそれを見切っていないはずもない。ダーズが伸ばされた左手をふわりと躱すと見計らったかのようにクレイジーの体を触手が叩き付けた。


この空間から。

外の世界に向かって。


「クレイジー様ッ!」

ダークウルフは思わず目を開いて声を上げた。

「あはははっ!」

肩を揺らしてダーズは笑う。

「ぼくの友達が助けてくれるから安心して?」

そんなことを言われたところではいそうですかと安心できるはずもなく。ダークウルフが反射的に飛び出すとダークフォックスとダークファルコは顔を見合わせて肩を竦めたり小さく息を吐いたりした後追いかけて──ルーティも全く同じ行動を起こすその寸前だったが直後にすぐ側をスピカが横切ったので気を取られて思い留まった。

「うーわ、眩し」

暗闇ばかりのこの世界にようやく目が慣れてきたというタイミングで光の中へ向かわなければいけないのもある意味で酷な話である。それに関してはカービィが代弁するように眉を寄せてぼやいてくれたのでルーティは思わず苦笑い。

「……スピカ」

その背を見つめて呟く。

「記憶を取り戻してくれるといいんだけど──」
 
 
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