第十章
ルーティは静かに息を呑み込む。
「知ってたの」
ダーズは首を傾げる。
「複製の動力源──」
「
どくんと心臓が大きく鼓動した。
「変なの」
ダーズはルーティから離れると地面に倒れ伏せて動かないそれの前に屈み込む。
「今まで普通に生きてきて気にならなかったのに死んだら気になるんだ?」
言い返そうとして言葉を詰まらせるルーティの心の内を知ってか知らずか追い討ちのように。
「この世界における主役は明白だよ。マスターハンドもクレイジーハンドもそれ以外の生き物にはてんで興味なかったでしょ。物語における外野にいちいち目をかける必要なんてあるかなぁ」
ダーズはその複製の頬に触れながら。
「お前たちは
すっくと立ち上がって。
「……ううん。もっと広く、その思考が理解されない可能性を考慮した方がいいかな」
後ろ手を組みながら振り返る。
「分かってるはずだよ? おれもお兄様も互いのことしか見えていない両想いだってこと。既視感あるよね? 説明させないでほしいんだぁ」
口の中が乾いて言葉が出てこない。
「……それとね」
パッと姿が消えたかと思えば──目前。
「守りたいものは選んだ方がいいよ」
大きく見開いた水色の瞳で覗き込みながら。
「神様は気まぐれだからね?」