第十章
知らなかったから?
「じゃあ」
知っていれば?
「今、死んだのは」
笑みを深めてダークファルコは答える。
「本物の人間ですね」
──知ろうともしなかったのに?
「ぁ」
ルーティの口から小さく零れ落ちた声が絶望を物語っていた。今だって表の世界では複製と複製が戦わされていることだろう。
きっとそのままの肉体であれば戦闘には不向きだっただろうによりにもよって戦場を知っている体を与えられてしまったばかりに神々の命じるままその訳も知らぬまま分からぬまま。
「いつから気付いていた」
ダークウルフが睨む。
「おや。俺は複製の存在を知った時から、周知の事実だと思っていましたよ」
「嘘つけぇ」
自身の胸に右手を置きながら微笑みを湛えて答えるダークファルコにダークフォックスが眉を寄せながらルーティの心情を代弁するように言う。
「ばぁ」
……心臓が飛び出るかと思った。
「さっきから何をしているの?」
ダーズはルーティの後ろからひょいと覗く。
「そんなにこいつが気になるんだ?」