第十章
まさか。
本当に本物の方を殺された──?
「だ……大丈夫、だよ」
もしそうだとしたら大丈夫であるはずがないのに自分ときたら無理をしてそんな返答をして。ぎこちなくも笑顔で取り繕っている……つもりだろうが口角がひくひくと震えるだけのルーティを目に見兼ねたカービィが訊ねた。
「あれ、本物?」
ダーズは表情を変えないままぐりんと棘で突き刺した今はもう微動だにしないその人を見る。
「……あー」
妙な間が不安を煽った。
「わからないや」
「はぁ?」
「興味ないもん」
呆れたように短く息を吐いたのも束の間。
「カービィ」
戻ってきたラディスに呼ばれて。
「……そうですか」
ウルフが動き出すとルーティはぎくりと肩を跳ねてその後を追った。彼の向かう先が肝心のそれだと気付いて思わず足を止めそうになったが真偽は確かめたいと自分を鞭打ち進み出る。
「さっきから何をビビってやがる」
「だ……だって……」
自分でもよく分からないくらいに胸騒ぎというものがあれが本物である可能性を否定しきれなかったのだ。そうこう話している間にウルフとルーティがそれに近付くとダーズの指示によるものか棘が引っ込んでそれは地面に落っこちた。限りなく黒に近い液体が傷を負った箇所から溢れ出て水溜まりを生成している。ウルフはルーティを横目に見てからそれに近付くと跪いた。