第十章
とはいえ──得られそうな情報がどれもこれも可愛くないどころか嫌な具合に記憶にこびり付いて離れなさそうなものばかりで正直な話あまり気が進まないがこのままじっと時を待つことはしたくないし落ち着けるはずもない。ルーティは頷くと血溜まりを踏む覚悟で踏み出した。
「、?」
足音が重なって振り返れば。
「──!」
ついて来ている。
「あ、……あー」
今のスピカ(と呼び続けていいものかどうか些か疑問だが)はダーズの支配下にある。妙な動きを記憶されてそれを後々報告されてはせっかくの作戦が台無しになるかもしれない。
「こ、こっちに行こうかなぁ」
なんてルーティが踵を返せば同じように。
「……はは」
目を付けられてる?
「俺たちを疑っているのかい?」
ラディスが訊ねるとスピカは徐に視線を寄越して見つめた。ラディスは首を傾げる。
「……うん?」
ぬいぐるみ程の大きさの生き物が達観したかのような口調で話していれば気にもなるか、とルーティが勝手に納得していればスピカはラディスの目の前まで行って片膝を付いた。そうして手を伸ばすので息を呑んで見守っていればその体はいとも容易く掬い上げられて回収されてしまう。
「だめだめ」
そう言ったのはカービィである。
「こいつ、噛むから」
「噛んでも痛くないと思うぞ?」
「そうじゃなくても病気うつっちゃうかもよー」